
九尾の狐
ごきげんよう。お待たせしました。ねぶとりです。4月卯月になりました。
春というのに寒暖の差は激しく、体調悪くされていらはる人間界の皆様も多いのでは?お大事になされませ。
桜の花達も、ここ会津では寒い日が続いているので、まだ蕾も硬いですね。梅も桃も桜も一斉に咲き出すので、本当に春爛漫の世界になるのです。このコラムが人間界の皆様に読まれる頃は咲いているかなあ?
花木の開花は遅くとも草花の芽達は、もう動き出しており境内の所々で小さな芽達を見つけるが楽しみ。
そして、今年は大好きなメジロちゃん達が沢山会いに来てくれました。花が咲くと蜜を吸いに行ってしまうので、近くで会えるのはこの時期だけ。ねぶとりの隠れ部屋の前の鉢植えや小さなお皿に、本尊様からほんの少しお譲り頂いた菓物、特に柑橘系の甘いのが好みなので、いくつか置いておくとついばみに来てくれるので、可愛くてほっこりしてしまうのでありまする。
処で先日の早朝、窓をコンコンコンと誰かが何度も叩くので、もしや御檀家様が急用かと焦って起きましたが、どうやら人間界の方ではなく、見たことの無い小鳥が何度もクチバシで叩いたり、半妖王子の部屋の窓は足先で叩いており、何かをまるで知らせるかの様。そして・・・それに合わせるかの様にねぶとりの叔母妖怪が、妖怪の世界へ帰ってしまったとの知らせが・・・!
ねぶとりには、まだ人間界で遊んでるよと言っていたはずなのに、妖怪の世界が懐かしくなって何も言わずに帰ってしまったのでした。見知らぬ小鳥の姿にへんげして知らせに来てくれたのかもしれまぬ。
叔母妖怪は、中国では「妲己」という美女にへんげして皇帝のお気に入りになり殷王朝を滅ぼした妖狐と言われ、日本に現れては鳥羽上皇のお気に入りの「玉藻の前」にへんげし、追いつめられて殺生石に封じ込められたといわれた「九尾の狐」でした。叔母妖怪曰く「わらわを殺生石に封じ込めたと人間は思うておるが、妖怪を簡単に消す事などできぬ。なんせ紀元前から何度もへんげしてきたのえ。ついでに言うておくが、わらわは元々瑞獣として吉祥の象徴なのえ」と。まじ?
人間は、妖怪を即悪者にしたがるもんね。
そういえば、数年前に殺生石壊れてしまったとニュースでやってたけど、叔母ちゃんの妖力?それとも吉祥の前触れ?
昭和の日本でへんげした際は、商家のはんなりお嬢。人間界の洋裁学校に通ったそうで、ねぶとりは、オーダーメイドのお洒落な洋服を沢山誂えてもらいました。叔母ちゃん、ねぶとりは人間界でまだまだ修行しているよ!また何かにへんげして会いに来てくれるのを楽しみにしてまっせ(^^♪

実は、父妖怪「油すまし」も3月の初めに急に妖怪の世界に帰る処だったのですが、本尊様方、仏様のお力で人間界に引き戻しました。人間界に飽きただの、御釈迦様に会ってみたいだのわがまま言っていらはりましたが、もう少し人間界で御意見番を務めてくれと頼んでいる処でおます。しかしながら、気まぐれなのでまたも妖怪の世界に帰ってしまうのではと、ちょっぴりはらはらですが。
今月8日は御釈迦様のお誕生を祝う、花まつり。
御釈迦様は寛大なので、叔母妖怪も父油すましのことも妖怪といえど見守ってくださることでしょう。では、また次回。